2011年4月5日火曜日

2011年度がはじまる

4月、新年度が始まる。授業は14日から。なぜ他のいくつかの大学のように5月まで待たないのか、という声があるらしい。大学の当局でもないのに何事かを私が述べるのは変である。それを承知で語ると、上智大学の学生のほとんどは首都圏である。残念だが全国区とはいいがたい。留学生諸君は韓国や中国から多いけれど東京とソウルは航空機でいえば指呼の間である。東京一局集中に乗っかっているのはよくないのかもしれないが。しかしフランスにおけるパリの例もある。ドイツは全く違うが。
我が国には東京のほかに西に商都がある。そこの首長さんは誠に商業資本原理主義をおっしゃしゃっている。全国的に都道府県庁のある市とはうまくゆかないというのは、国であれ、都道府県であれ、
または市町村であれ「幻想の共同体」だとみれば、幻想の自意識がバブルをおこしてぶつかり合っているのだろう。よってなまじ市にして置くより特別区制度で分散統治をめざす、というのはわかったような理屈か。だからといって、東の都の首長候補が特別品位があるとも言い難いが。時節柄北の都を
応援しておこうか。

授業開始に先立ち、学科別・学年別の集会をやった。いろいろしゃべった。いいたかったことを、補足まじえてーというよりしゃべらなかったことが8割だが、書くとこういうことだ。
  1. 現在は世界にとっても一つの屈曲点かもしれない。三局世界といわれたここ半世紀弱であったが、まず、かつて圧倒的存在感のあった米露のうち、露がこけた。次には米が国家社会ぐるみの金融賭博でこけた。欧州はなまじEUを作ってしまったからソブリン危機が拡散している(RTじゃないよ、もっともRTは私のイニシャルだが。)。そして我が祖国日本。
  2.  私は地域も、国も短距離レースをしているのではなくリレーをしているのだとおもう。人類社会は私のおぼつかない記憶では、黄河・インダス・ナイル・チグリスユーフラテスで文明がめばえ、いろいろあって15世紀末のイタリア、大航海時代、大陸ヨーロッパ、イギリス、アメリカ西海岸から東海岸そして日本韓国。そして中国。インド、中近東。つまり世界文明の2週目が始まりつつあるのではないか。(年初来日したジャックアタリの着想にヒントを得ている。)。90年代プレジデント社刊のの「融合革新」(澤登編)にあらたな千年紀(ミレニアム)と題して書いたこともある。まだほとんどの人は世紀単位で物言いをしていたが。
  3.  実は学科学部の同僚の皆さんにおわびをいい、反省しなければならない事がある。勿論たくさんあるのだがー嗚呼。昨年末の紀要に「大転換の時代に社会保障は生き延びれるか」という時論まがいの物を寄稿すると約束して果たせなっかたのである。話はこうである。私の大学・教室の先輩で最近までーつまり民主党が政権をとる以前に長期にわたって社会労働委員会・厚生労働委員会に重きをなし、シャドウキャビネット厚生労働大臣の五島正期さんが「おい高原、社会保障に逆風が吹いているのではないかといわれたのがきっかけである。(同門の先輩とは、岡山大学医学部衛生学教室大平・青山両名誉教授時代の兄弟子弟弟子関係。私はその教室の博士課程単位取得満期退学という医学ではあり得ない経歴をたどった。責任を転嫁すると、これは旧厚生省の大先輩から、本省で学位を取ったというと窓際族と思われ出世しないぞいわれて、のんびりしていたら提出期限におくれ、せかされて誰が審査をするのですかと憎まれ口をたたいてアウトということである。したがってテキサス大学の修士論文以外は雑文がほとんどである。)。
  4.  話はこうである。社会保障の淵源であるイギリスの救貧法・工場法・衛生改革からの流れはNHSなどで実を結んだが、大英帝国の果実に甘んじ改革・革新をおこなわず市場主義改革に道をゆずった。社会保険の祖国といわれているドイツは介護保険は導入されたが拡大基調とはいえない。総じて欧州はECを形成し、しかも加盟国が増大するなかで、均霑化がやっとではないか。比較的充実していた南欧もIMF基準を押しつけられどのあたりで踏みとどまるか微妙であろう。米国は民主党政権となり医療保険に熱意をもつクリントン夫人が起用されているが議会もねじれ、次期政権に向けてリベラル路線で持つのか。次の走者BRICsはまだ社会保障は限定的に考えられるのみであろう。これらの事態が起こったのは社会主義が崩壊したという要素も大きい。

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